じろりと見上げる。あたしの気持ちなんてお構いなしに弥生は首を傾げてる。もちろん弥生は何もわるくないんだけど、でも!


最悪の気分だ。


「帰る…!!」


椅子から落ちるように立ち上がる。


「え、起こさないの?」

「揺さぶっても怒鳴っても何しても起きないのっ」


キ、キ、キ…ス……したって起きないんだ。


「待ってよとーか」

「成咲なんて知らないから。これくすり」

「おいって」


ぐっと腕を掴まれる。背後から覗き込むように視線を送られた。


「なんかあった?」


どきりとした。背中がひんやりして、心臓が止まりそう。

後ろめたい気持ちになるのは、成咲が寝ていたから。成咲のことがきらいなはずなのに、正反対のような行動を考えなしにしてしまったから。


「な、なんかって…なにもないよ。アイツぐっすりだし…」

「ならいいけど。泣きそうな顔してるみたいだったから」


弥生はたまにちょっとこわい。見透かされそうで、嘘なんて通用しなそうで、なんだか咎められてるような気分になる。

泣きそうだよ。だって、なんでキスなんてしちゃったんだろう。