「あ…あたしの話はもういいよ!それより、樹良くんの気持ち、断っちゃったんだよね…?」
知らぬ間に彼はフラれていた。良い人だって思うんだけどなあ。
「修学旅行の時、姫春のことすごい一生懸命探してた。大好きなんだろうなあって伝わった。余計なお世話かもしれないけど、だめ…だった…?」
そう聞くとちょっと困ったように眉を下げた。
困らせたいわけじゃないんだよ。でも、姫春には毎日楽しいって幸せな時間を過ごしてもらいたいから、どうしても樹良くんのことが残念で。
「樹良くんのことがだめとかじゃないよ。むしろ付き合ったら好きになると思う」
「じゃあ…」
「今までもね、ずっとそうだったの。好きだって言ってもらってうれしくなって、わたしのことを好きだって言ってくれる人がいるんだって思うと安心して、一緒にいたくなって、だから付き合って、わたしも好きだなあって思う…みたいなの、ずっと繰り返してた」
やっぱり、今までもっと話を聞けばよかった。
恋愛のことはあたしにはわからないからって、姫春のほうがわかってるからって、あまり聞かないようにしてた。こんなにも悩んでいたのに、それをひとりで抱えてたなんて、不甲斐ないよ。
「優しく敷かれた道順をたどるんじゃなくて、次は心から好きだなって思う人と付き合いたいの。だからお断りしちゃった。もったいないよねえ…樹良くん、いいひとだったもん。ちゃんとそれは、わかってる」