土日を挟んだ次の日、バイクを変えたんだ、と得意げに見せびらかしてきた成咲のご機嫌なツラを見て、もう自分が焦って悩んでいることがバカらしくなってくる。

そうだよ。コイツの好きな人なんてあたしには関係ないし。気にする理由がないよ。


紹介された2代目のそれは1代目にくらべて小さくてゴツゴツしていない。

なんというか、ちょっと可愛らしくて女の子でも乗れちゃいそう。


「前のほうがイケメンだったじゃん」


これのほうがアンタには似合ってると思うけど。


「おれのプジョーのジャンゴをバカにすんなよ!ほら触ってみろ、この触り心地!最高じゃね?」


つるつる、というよりシュルシュルしている。柔らかい感じ…というかなんで勝手に手握ってくんだコイツ。

でも振り払ったら意識してるってバレるかもしれないから堪えるしかない。


「なんで変えたの?気に入ってたじゃん」

「とーかが乗りにくいって言ったんじゃん」

「え、アンタのやつなのになんで…」

「これからもとーかのこと乗せるし、安心して乗れるやつのほうがいーだろ」


…どうしたコイツ!!?鳥肌たった……こわすぎる。雪?雷?隕石?なんか降ってくるんじゃないの?


だってあたしに、優しくしてくるなんて…今までだって片手で数えるくらいしかなかったのに、大好きで大事にしてた愛車を変えるなんて、びびる。

しかもこれからも、とか、大学で離れること知らないからそんなこと言えるんだ。