あたしのことなんて放っておいて、大学だってどこへでも行けばいい。
「オマエは、おれが他の女の子と付き合ったりしてもいいってこと?」
そんなの、嫌に決まってるじゃん。
だけどなんでそんなこと言わなくちゃならないの。
もう今まできっと何度も、何十回も、何百回も、何千万回だって、アンタの時間をもらってきたのに。
「そんなの、知らないよ。…もう帰るから」
意地悪なことを聞いてこないでほしい。そんなあたしがワガママを言えるわけないじゃない。
りんごとドリンクと冷えピタの替えを成咲が取りやすいところまで近づけて、荷物をまとめて家を出る。
「とーか」
上から降ってきた声を見ると、窓からつらそうなアイツがこっちを見下ろしている。
「来てくれてありがと」
やけに、素直。
あたしなんてあの部屋に入った瞬間から、なんてことないふりをするので精いっぱいで疲れてるんだ。安静にして、早く帰らせてほしい。
「鍵、植木鉢の裏に置いておいたから。…早く寝な」
「うん。…ごめんな」
何がだよ。
なんでいつも、あたしが怒ってない時だけあやまるの。
『ぼくのせいでごめんね…ごめんね、とーかちゃん』
アンタのせいじゃない。
それでも、傍にいてほしい。
そう言ったって、成咲には届いてくれない。