自分のおなかをにらみつける。
「……りんご、全部食っていーよ?」
「………」
「下に鍋あったろ。咲乃のおかゆもあっためて食ってけば」
手を離されて自由に身動きができるようになり、逃げるように立ち上がる。
せっかく問い詰めてやろうとしたのに、なんでこんな時に限っておなかが鳴るかなあ。
「笑わないでよっ」
「笑うだろ。今のタイミングでかよって」
「今のタイミングだってべつにいいでしょ!」
「だっておれ今、オマエのこと抱きしめようとしたのにさあ」
ひーひー笑いながら、さらりとまた意味のわからないことを言う。
抱きしめるって、なんでだよ。
言葉がなさすぎて、笑ってる場合でもおなか鳴ってる場合でもねーよって言ってやりたい。
「お、おか、おかしいでしょ、そんなの、あたしたちが…そういうの」
べつにおなかが鳴ったってそうできるでしょ。それなのにしなかったってことは、思い留まったわけで、きっとコイツも、おかしいってなったってこと。
笑わなくたっていいじゃん、生理現象なんだから。それよりももっと、優しい言葉をかけてくれたっていいのに。
「まあ……そうかもな」
「…成咲と、予備校の子とか、クラスの子とかなら、まだしも」
そういう子たちにはアンタ、優しくできるんだし。