部屋を開けるとベッドに寝転がる姿。見慣れてるけど、家に行くことは最近なかったからちょっと新鮮だ。


「おいバカ」

「……」

「成咲」


反応がない。腹立つなあ。

弱点の首元をくすぐると、それはそれはうるさい声で叫び出す。やっぱり寝たふりだった!


「鼓膜破れるんですけど」

「オマ、やめろよ!」

「…寝たふりするのが悪いんでしょ」


本当に腹立つよね。そういえばあの時だって起きてたってことは、あたしの名前を寝言で言って続けて「ブス」とか、からかおうとしてたんじゃないの。


「は、ざんねん。またキスしてくるかなって思ったのに」


からかうように言われて思わずみぞおちにパンチ。誰がするか。

ごほごほ咳き込んでいる。病人なのに本気でやっちゃった…。まあコイツがわるいよね。


「りんご剥いたから痛がってないで食べてよ」

「あ、ちゃんとうさぎになってる」


それだけでうれしそうな顔をするからやっぱりコドモだ。図体だけが大きくなってるだけ。そういうことにしておこう。

ついでにあたしもいただく。甘くておいしい。近所のあの八百屋さんで買った話をすると「だからか」と、成咲も甘さを感じていたことが伝わる返事をされた。


でも一個しか食べない。



「あちー…だるいし」


うん、まあ、だるそう。青白い顔してるもん。


「くすりは?」

「さっき咲乃のおかゆ食べた後ちゃんと飲んだ」

「そ。着替えは?」

「してない」

「汗かいてるじゃん。悪化するから着替えたほうがいいよ」