そんなにか弱いつもりもないし、何もできない箱入り娘なわけでもないんだけどなあ。
やっぱりあの事件が原因なんだろう。
あんなことなければ、あたしたちは単なる幼なじみで。いや、ただのクラスメイト、知り合い、くらいだったんじゃないかな。
帰りも弥生が送ってくれた。
だけどその後、どうしても気になって、成咲の家に行くことにした。
アイツはおかゆもママが作ったものしか食べないから、とりあえずドリンクと果物を買っていってあげる。
咲乃ママいるのかなあ…と思いつつ家の前まで行くと車が置いてなかったからお仕事みたいだ。よかった。
いつもやられっぱなしだから、呼び鈴を何度も押してやる。これうざいだろ。
「うぜえ、なんだよ」
と玄関を開けるなり嫌味なことを発する、本当に嫌そうな顔。冷えピタがついてる。うける。
「ん。果物切るから開けて、アンタは寝てろ」
「は?勝手に入んなよ」
「その顔、熱高いんでしょ。わかるよ」
咲乃ママがいないならほっとけないし。
ぐだぐだ言ってる成咲を部屋に押し込んで、あたしはキッチンへ。
相変わらず殺風景な家だよなあ。
成咲のママとパパはふたりとも同じ会社に勤めていて、けっこういそがしい人たちだ。
アイツがママの手作りしか食べられない、なんて身体の持ち主じゃなきゃうちでごはんを食べる機会もあったんだろうなあって、よくある幼なじみってやつを想像したこともある。