どうしたらいいんだ、MAJIDE。


「なんで英語?」

「好きだから。英語のこと考えてるとよけいなこと考えなくて済むなあって気づいて」


単語帳、教科書、英語辞典、自習ノート。

授業と授業の合間や昼休み、もう暇もなく勉強、勉強、勉強…をしているといつの間にか放課後になっていて、姫春があきれたように話しかけてきた。


「成くんに矢川先生に用があるからって伝言頼まれたよ」

「え、じゃあ早く帰ろ!」

「待っててって言ってたし、引き留めといてって頼まれてるの。ここの問題の英文教えて?」


アイツ、バカなくせに姫春を使うなんて。

律儀で優しいんだから断れないしあたしだって姫春から頼まれたら断れない。



「ねえ、今度は何悩んでるの?」

「……実は弥生に俺のことはいいから自分のことを考えろって言われた」


自分のことって何。どちらかと言えば自分本位な性格だなって自分では思ってるんだよ。

成咲のことワガママだとかいろいろ言うけど、本当はあたしのほうが当てはまってるんじゃないかな。


「それなら、英語も大事だけど自分のことをちゃんと考えたらいいんじゃないかな」

「だけどさあ…」

「そうすれば弥生くんに対してどう返事を伝えたらいいかも、成くんに対してどう接したらいいかも、わかってくると思うなあ」


なんでそこで成咲が出てくるの、とはとても言えない。

なんであのとき、キスなんかしちゃったんだろう。


たくさん考えたけど、本当は考えなくても理由なんてわかってる。

でもこわいんだ。

認めたらもう、変わったかたちは元に戻れなくなっちゃう。