「成くんととーかちゃん、相変わらず仲良しねえ」


ご近所さんからの勘違い発言。


「「まったく仲良しじゃありません!」」


全否定しようとしたら声が揃ってしまった。いや待て、言う通りではあるけどコイツが否定すると癪だ。


弁慶を蹴り上げると「痛ぇ!!」と叫び、昇降口でうずくまっている。もうそのまま小さくなって消えてなくなれ。

久しぶりにけんかしたな、と思ったけど、そもそもちょっと我慢してあげていただけで本当は毎日けんかの種がごろごろ転がってるっていうのは変わらなかった。それが今朝はけんかになっただけ。


「置いてくなよボーリョク女!」

「うるさい」


知らないし、もう。

無視して行こうとしたら手首を掴まれた。


成咲じゃない。相変わらず目の前で倒れそうになってるもん。


「またけんか?飽きないな」

「弥生!」

「置いてくんだろ?」

「あ、うん」


そう言うと腕を引かれる。


「ちょ、弥生!ソイツに触んなって子供の頃から言ってんだろ!」


ソイツって誰だようざ。


「ソイツって誰のこと?」


同じことを思ってくれるのはありがたいけど…この状況って。

あれ以来まともに話してないのに。


「とーかさ、この前のことなんだけど」

「え、あ……あの……」


きっと答え、だよね。

心もとなくて、かばんをぎゅっと握る。



「もう困るのやめていいから」

「…え」

「俺のことは考えなくていいから、自分のこと考えな」


返事をする間もなくそう言って教室の中に入ってく。

考えなくていいなんて言われたって、こんな状況人生初体験すぎて…。