待って。なにそれ。
なんなの。
なんでなの。
意味わからない。
今にも背中を叩いてやりたいくらいだ。
でもできないから、掴んだ背中の、あんまりない皮膚をぐっとつねってやる。
ふざけんなよ。
「運転中にああいうことすんなよ、危ねーだろ」
「……」
そんなことはわかってるよ。なんでお説教みたいなことされなくちゃならないの。
家まで送ってくれたけど、本当なら途中で降りてやりたかった。そんな勇気なくてできなかったけど。
「何、楽しくなかった?」
どの口が言う。
キッとにらむように見ると、成咲が息を飲んだのがわかった。あたしが相当いらだっていることを悟ったのだろう。
「今日、…デートじゃなかったんだね」
可愛い格好をしたのに。髪型だって、化粧だって、誘われた時からさっきまで、あたしの頭のなかはもう、成咲とのそれでいっぱいだったのに。
「アンタなんて大っきらいだ」
何か言いかけていたけれど無視をして家に逃げ込む。
どうせ同じ台詞を返されるだけ。
期待なんてしなきゃよかった。
期待させるようなこと、コイツが言ったのが悪い。
もう二度とワガママなんて聴いてやるもんか。ぜったいに、ずっとこのまま、隠してやる。