着いたのは大きな水族館だった。
「オマエ水族館好きなのに沖縄で行かなかったみたいだから」
「…、えっと、…どうも」
何その、なんかちょっと、うれしくなっちゃうような感じ…成咲のくせに。
思わずお礼をつぶやくと成咲は慣れてないというかのような表情を誤魔化すように笑った。
「水族館ってなんかね、ラクでいいんだよね。ラクだから好きなんだよね」
「ふーん」
「だって泳いでる魚とかクラゲとかをただ見て飽きたら次のブースに進めばいいだけだし、気持ちよさそうに泳いでるの、なんか綺麗だし」
「飽きたらってなんかちょっとかわいそうだろ」
「でもそうでしょう」
「まあそうだな」
けんかにならないからへんな会話になる。
うーん。
あたしたち、なんか、ちょっとぜったいに変わったよね。むずむずする。
「まだ飽きないの?」
「んー…」
「なあ、ちゃんと見てる?」
見てる。今、眉をひそめてる。
水槽に映る、成咲の姿。
大きくなったなあって。すごいなあって。成長してるって目で見てわかるってすごいなあ…って。
「オマエは何が好きの」
「え、っ……わから、ない」
「なんだそれ」
ね、なんなんだろう。
癒されるこの空間で、あたしはどうして、さっきから成咲の姿ばかりなぞっているんだろう。
そっか。あたしが本当に好きなのは、ここで泳ぐ子たちじゃないんだ。