ベッドのうえで騒いでいると、アンジェラに「埃が立つから下りてやれ!」と叱られた。従ったノアは、朝の支度とキルケゴールの世話のために部屋を出た。

 ソファで紅茶を飲むルルの髪を梳きながら、アンジェラは忠告する。

「ルルーティカ。ノアにああされそうになったら拒否しないとダメだぞ。結婚相手でもない男とくっついて寝るなんて、王女さまがやっていいことじゃねえ」
「誤解しないで、アンジェラ。あれは、単にわたしを熟睡させようとしてなの。子どもだって親と添い寝すると安心して眠れるでしょう?」

 現に、ルルはぐっすり一晩眠れた。頭もはっきりしているし体も軽い。巣ごもり状態では得られない爽快感がある。こんな朝は久しくなかった。

「お前はそうでも、あっちはそう思っているか分からねえだろ。聖王になるってんなら一角獣《ユニコーン》に好かれないといけないはずだ。あいつらって、男性と付き合ったことのない清らかな乙女が特に好きなんだぞ。うっかり乱暴でもされたらどうするつもりだ」

「ノアは、そんなことしない!」