大きな事故だった。キルケシュタイン博士や研究員、ルルの付き人がみんな亡くなってしまうような、大きな大きな事故だった。

 ルルが額に怪我をしながらも助かったのは、持てる魔力をすべて使って自分を守ったからだと、事故の原因を調べる調査団から言われた。

「――事故から身を守るために魔力を使い果たして、消えない傷あとを持ったわたしに、父王や母は言ったわ。政略結婚にも使えない役立たずって」

 両親から投げかけられる言葉や卑下する視線は、ルルにとって刃だった。
 形のないそれは、いとも簡単に肌を通りぬけて心をつらぬく。刺された心は、目には見えない血を流して、いっこうに治ることはなかった。

 連日のようにメッタ刺しにされるルルは、どんどん弱っていった。
 王城から遠く離れた修道院へ入れようという動きが出てきたとき、ルルは肯定も拒絶もしなかった。そんな気力はなかったのだ。