『王族だというのに魔力を失ったなどと嘆かわしい。しかも顔に傷なんて、政略結婚にも使えまい』

 頭の奥底で、かつて浴びた父王の声がする。
 母の軽蔑するような表情も、昨日のことのように思い出した。

 ルルの頭から血の気が引く。体から力が抜けていく。ジュリオがしてやったりという顔で手を離すと、ルルはその場にへたり込んだ。

 周りの視線が怖い。
 失望した顔つきも、家族から閉め出す空気も、もう二度とごめんだと思っていた。

 早く、早く毛布に包まれなくては。誰の手も届かない、狭くて温かな礼拝室で、丸くなって眠らなくては。これ以上、傷つけられる前に。

 そう思うのに、足が動かない。ルルは、目をぎゅっとつむって願う。
 
(だれか、たすけて!)