「死ぬ気?」


腕を引く人物を見上げると、見知らぬ男子高校生が冷めた目で私を見降ろしていた。


「…はい」

「やめなよ」

「どうして」

「悲しむ人がいるじゃん」

「いない」

「いる」


なんでそんなはっきり言い切れるの、と口にしようとすると


「電車の遅延は勿論事故になるから現場検証も入るし、お前の家族はその賠償責任負わされる。次いでに言えばここで自殺現場見せられた人達はトラウマになるわ、悲しいどころじゃ済まないかも」


と正論を言われる。

確かに、その通りだ。もう少し迷惑をかけないような死に方幾らでもあるだろうに、こんなことにおいてまで私は容量が悪いのか。


「ごめんなさい…もうしないので」


俯いてぼそっとそれだけ呟くとその場を離れようとする。けれど。


「あの、腕離してください」

「今離したらまた死のうとするだろ」

「…貴方に関係ないですよね」

「せっかく止めたのに結局別の場所で自殺されたらこっちも嫌な気になるんだけど」


嘘だ、知らない人が1人死んだくらいで何か思うことなんてあるはずない。

仮に何か思ったとしても、そんなの形ばかりのもので結局心の内ではどうでもいいと思っているものだ。彼の言葉を信用できず、無視して行こうとする。が、やっぱり離してくれない。