午後5時23分、学生達の帰宅ラッシュ。

小さな駅のホームも、混雑とまではいかないにしても多様な学生服に身を包んだ中高生達の姿を多く目にできる。


共通の話題で盛り上がる友達同士と思われる3人組。付き合いたてなんだろうか、何処かぎこちない雰囲気で笑い合うカップル。

私だって、本当はそんな風になりたかった。でもなれなかったんだよ。


他人を羨んでも妬んでも仕方ない、ギュッと唇を噛み締めてそう言い聞かせても胸に広がるもやもやしたどす黒い感情は収まる気がしない。今までずっと考えないように抑え込んでいたのに、今日ばかりはもう無理だった。


私、もう限界だ。負の感情で頭がいっぱいで死ぬこと以外何も考えられない。この世の中に、希望なんてない。もうこの世からおさらばするしかないんだ。

ホームの上部に付けられた電光掲示板をちらっと見る。このホームに電車が入ってくるまで、あと1分。目の前のホームへ飛び込もうと、足を一歩踏み出そうとした時だった。



「!!?」



急に腕を引かれて、一歩踏み出そうとした足は引っ込められてしまう。

ホームへ自分の身体が落ちることはなく、時間通りにホームへ電車が入ってくる。
何事もなく到着した列車からは、乗客がぞろぞろ降りて来て立ち止まったままの私の横をすり抜けていく。後ろに引かれた身体は誰かに支えられていた。