お酒が入ったとは言え、酔っ払うほどの量ではなかった。
でも、立ち上がっただけで、少しふらつくような感覚。
ん?
おかしいな、体に力が入らない。

「琴子さん。少し酔ったみたいね。大地さんに送らせるわ」
「いえ、大丈夫です」
とは言ったが、確かにフラフラする。
それに、この感じは・・・

「お手洗いへ行ってきます」
私は個室を出て、トイレに駆け込んだ。

トイレの個室に入り、周りに誰もいないことを確認してカバンから携帯を取り出した。

プププ プププ

『もしもし』
「もしもし翼?」

『琴子?どうしたの?』
驚いている翼の声。

「悪いけれど、助けてくほしいの」
私は手短に事情を説明し、カバンの奥に通話ボタン通したままの携帯をしまい込んだ。

トイレから出てくると、美優さんと大地さんが待っていた。

「じゃあ、行きましょ」
なぜか笑顔の美優さん。

私は大地さんに体を支えられながら、車に乗り込むことになった。