「結婚する人にはこのことを話さないといけないんだよね……。こんなファンタジーな力を持った私を好きになってくれる人なんているのかな……」

高校生になってもうすぐ一ヶ月、好きな人はできたけど彼氏はいない。いつも恋をするたびに力のことを知ったら……と不安になって前に進めないんだ。

「お嬢さん、前を向いて歩かないと危ないよ」

心地よいテノールの声が聞こえ、私が辺りを見回すと近くの家に咲いているルピナスが声をかけてくれたんだ。そうだよね、俯いていたら気分がどんどん落ち込んじゃう。

「ありがとう!」

私はお礼を言い、学校に向かって歩き出す。今日は月曜日。また今日から五日間、学校に通う。友達はみんな「ダルい〜」って言うけど、私はすごく学校に通うのが楽しみ。だって好きな人に会えるんだから……。

「桃ちゃん、おはよう」

後ろから声をかけられ、ドキッと胸が高鳴る。好きな人に声をかけられた時ってすぐに胸が高鳴っちゃう……。私がゆっくりと振り返ると、ふわふわした柔らかそうな髪の男子にしては少し低めの身長の可愛らしい雰囲気の男の子がいた。私のクラスメートで同じ家庭部に入っている鏡桜河(かがみおうが)くんだ。