「こんな雨の中歩いていたら、風邪引いちゃうよ」

あんな普通じゃない私を見ても、桜河くんのかけてくれる言葉は優しい。私はゆっくりと振り返った。

「桜河くん、私は普通の女の子じゃないんだ。花や植物と話ができて、あんな風に操ることだってできる。こんな私のそばにいたら、桜河くんまで何か言われちゃうよ……」

桜河くんは優しく微笑んでいる。だからこそ、傷付いてほしくない。でもこの恋を諦めたくないと思う私もいて、もうどうすべきかわからない。

「僕は、何を言われたっていいよ。だって桃ちゃんはみんなを救ったんだ。いいことをしたんだ。だから、堂々とこれからも桃ちゃんと話す」

「どうして……」

嬉しくて目の前がぼやける。過去にこの力を知ってしまった人たちは、私のことを「怖い」って言ったのに……。

「桃ちゃんが好きだから、そばにいたい。それじゃダメかな?」

そう真剣な顔で言われた刹那、私たちの距離がゼロになる。初めて触れた唇は、とても温かった。