そもそも、わたしは芸能活動もしているから、覚えてもらえないことなんてなかった。


わたしが知らない人でも、向こうはわたしのことを知っている。

それが、これまでの生活だった。


芸能人として特別扱いされるのは好きじゃないけど、まるで空気のように初めからいなかったかのような対応をされるのも、それはそれでちょっと傷つく。


「…あんた、名前は?」

「わ…わたしは、花宮ひらり!」