「随分と、その……見違えるほどに、お元気そうで……」
「おかげさまで、見舞いに足を運んでもらう必要がなくなったよ。この一年、君にも色々とあったのだろうけど、わたしにもそれなりのことがあってね」
「心より、お慶び申し上げます」
「ありがとう。嬉しいよ、君はわたしにはもう興味がないかと思っていたから」

 にこやかに見下ろす視線にギルバートの顔は引き攣った。
 ほとんど自室からも出られず、広く見ても行動範囲は王城の敷地内にある別棟のうちという生活を送るマリウスのもとへ、年頃が近いからと話し相手に割り当てられていたエドナとギルバートは毎月のように揃って見舞いに訪れる……それは二人が婚約する前も、してからも、続いていたことだ。

 ごく狭い世界で生きていたマリウスにとって、外の出来事を知る数少ない時間。破綻したのは二人の関係が壊れ始めてからだ。婚約者ではなくメイドを連れ見舞うようになったエドナと、顔を見せることのなくなったギルバート。疑念のきっかけなどそれだけで十分だった。

「そちらのお嬢さんも変わりないようだね」
「…………ッ、」

 声をかけられたソフィアもまた険しい顔つきで、何事か思うところがあることはその態度から明らか。
 その理由を把握しているエドナからしてみれば呆れて物も言えないが、本人にとってはそれを公言されるかどうかは、それも恋人の前でとなると死活問題に違いない。

 くだらない。過ちに過ちを重ねる彼らが滑稽で、目の眩んでいる者も、憤りを感じながらも黙っている者も、……そして自分も、みんな馬鹿でしかない。