「それではギルバート様、ソフィア様、そしてみなさま、お話を続けましょう」
すっかり遠巻きになって成り行きを見守る生徒や教師を見渡して、エドナはそっと唇に弧を描く。
彼女としてはこうも事を荒立てるつもりなどなかった、始めたのはギルバートたちであり、エドナは引きずり出されたようなものだ。
先に大衆の面前で述べたように、罪はないつもりだからこそこうして相対している。
ソフィアを虐げてなんの得があるものか。
何度か口頭で注意をしたことはある、婚約者のいる男性と誰彼構わず親しくするのはどうなのかと、その他、庶民出とはいえ貴族の子女として、学園の生徒として、淑女らしい立ち居振る舞いを求めた、それだけのこと。
目に余る言動を窘めた、それ以外に意味も感情もさほど持たないささやかなやり取り。
今となっては認めたくないが、少しばかりの不満や虚しさくらいはあった。婚約者であるはずのギルバートが徐々に遠く離れていくのを感じて。政略結婚なのだからと割り切っていた関係すらも壊れていくのが分かって。
だからといって自分に繋ぎ止めたいという強い想いはなかったし、家同士の事情から、結局は形だけだとしても彼は自分を選ぶしかないのだと、幸せとは程遠いだろう未来しか思い浮かばないことに切なくなりはしたけれど――。