す、とエドナが滑らせた視線に、男子生徒たちの肩がぴくりと反応を示す。
 口裏を合わせて吊し上げだなんて、それこそがまさしく虐げているという行為なのだと気付いていないとでもいうのか。

「私の罪を白日のもとに晒したいとの思いからこの場での婚約破棄を宣言されたのかもしれませんが、」

 これではこの国の先行きが不安にもなろうというもの。これから先の国政を担う立場になるかもしれない、少なからずいずれ領地経営等を行なうであろう子息たちが、このような。

「このように私に罪はございませんし、これ以上お話を続けたいようなら、仕方ありませんからお付き合いはしますけど、場所を変えませんか?」

 ギルバートはこぶしを握り締めて震える。
 エドナの記憶にある彼は、こんな風に一方的に相手を謗るような人間ではなかった。侯爵家の跡取りとして何事においても真面目に取り組み、少々独りよがりなところもありはしたものの友人の多い好青年で、だからこそ婚約者として精進しようと思っていたというのに。

「潔白だと言い張るのならここでも構わないだろう。こちらは何の問題もない」

 意固地になり引くに引けないのだろう、ギルバートが言い切る。エドナはひさしぶりに見た彼の一面に小さく笑う。幼なじみゆえの他愛ないケンカを、いつも長引かせていた原因だった。たいてい彼女が折れて終わったが、今回ばかりはそういうわけにはいかない。
 彼がそう言うならば、ともに晒し者になろうと覚悟を決める。彼らの知らない切り札を、こちらはすでに押さえているのだから。