30分は走った頃だろうか?


まだ状況を理解出来ないまま、硬直したリカの身体は段々と寒気を覚える。


リカ『…。』


言葉が見当たらない。


そもそも何故私がここにいるの…?


この人は誰…なの?


あの刺された人は…?


下を向くことしか出来ない。
ましてや、運転席の男の顔すら見ることさえも。


信号待ちで咄嗟に飛び降りようか?
いや、この車では車高が高すぎて絶対無理だ!
降りたところで逃げ切れる自信もない。


さっきの大きな左手、並大抵の男ではないことはリカにも分かっていた。


涙を押し殺し泣いてはいたが、
身体の震えは止まっていた。


滝沢『降りろ』


威圧感のあるその低い声は、少し落ち着きを取り戻しかけていたリカの背筋を再び凍らせた。


小さくこくりと頷き車外に出る。
寒さが一段と身体を硬直させる
ピンと張り詰めた澄んだ空気
ここは私の知らない所だ!


真っ暗で見渡せない景色


でも、郊外に来た事は一瞬で理解出来ていた。


舗装されていない道には
ぬかるみのようなドロドロした部分もある。


逃げ出したい気持ちを抑えながらも、
リカは滝沢の後について歩き出した。