━━━━━翌日の夜━━━━━



滝沢が、結城洋太に電話をする。


滝沢『俺だ。』


洋太が電話に出たようだ。


滝沢『金の用意は出来たか?』


滝沢『受け取り場所を今から言う。』


場所と時間を滝沢は淡々と告げると電話を切った。


リカ『前から思ってたんですけど、電話でやり取りするのは大丈夫なんですか?』


滝沢『あぁ、この電話は大丈夫だ。逆探知されても、どこかの国の1台の電話に行き着くだけだ。』


リカ『そんなこと出来るんですね。』


滝沢『で?お前、本気なのか?』


リカ『本気です。私が生まれ変わる為に必要な事ですから』


滝沢『後4日ある、もう少ししっかり考えろ。』


リカ『変わりませんよ。』


滝沢『とにかく、ちゃんと何回も考えろ。』


滝沢は、リカを睨みつけて言った。


リカは下を向き、頬を赤らめる。





━━━━━━4日後━━━━━━




郊外にポツンと一棟ある建物。


今は使われてない廃ビル。


黄色と黒のストラップの工事用フェンスに囲まれている。


工事用フェンスの下が外れて人が1人通れる隙間を、結城陽太は通り抜け中に入る。


周りを確認しながら、廃ビル横の非常階段を登りはじめる。


洋太『この金さえ渡せば、全て終わる。』


そう小さな声で呟いて、階段を登り続けた。


階段を登りきり屋上に出た洋太は、屋上の端で景色を見ている男の後ろ姿を見つけ、男に歩み寄る。


洋太『すいません。お待たせしました。』


滝沢は、屋上から外を眺めながらタバコを吸っている。


滝沢『満足したか?』


洋太『え?あ、はい。ほんとに助かりました。』


滝沢は洋太の方に振り返り、『金をよこせ』と言わんばかりの手の出し方をする。


洋太『あぁ!すいません。これ約束の金です。』


滝沢は、その金を受け取ると小さく頷きまた屋上の外の景色を眺める。


洋太『じゃ、僕はこれで…』


『洋太。』


先程、洋太が登って来た階段の方から洋太を呼ぶ声。


振り返ると、黒のパンツスーツを着た見知らぬ女性が立っていた。


洋太『え?』


と言うと、洋太は滝沢のほうをまた振り返るが滝沢は、先程と同じく景色を眺めながらタバコ吸う吸っていた。


洋太の方に歩み寄る女性に向き直る。


向き直ると手に木刀?を持っていた。


洋太『ちょ、ちょっと!誰ですか?』


手の平を前に出して、慌てて言う洋太。


リカ『私がわからないの?』


洋太の方に歩み寄りながら、木刀かと思われた物は白鞘の日本刀であり、白鞘から鋭く光る刀身をゆっくりと抜くリカ。


洋太『しっ!知らない!誰だよ!?』


洋太は滝沢の方に振り返り。


洋太『誰ですか!この人!?』


カランッ!


白鞘の鞘を落とした音で、洋太はリカの方を見ると目の前までリカが迫ってた。


リカ『さよなら……』


そういうと洋太の首をめがけて横に振り抜く。


洋太『ごぉぉ…』


洋太の首の頸動脈から血が吹き出し、リカの全身が血に染まる。


洋太は血を吹き出しながら両膝を地面に着き、そのまま倒れる。


洋太の周りの地面に、洋太の血が流れて行く。


リカは、そのまま滝沢の後ろまで歩いて止まる。


璃夏(リカ)『滝沢さん…』


滝沢『……。』


日本刀を持つリカの手に力が入る。


璃夏(リカ)『あなたは、私のすべてを奪いました……。』


滝沢は、タバコの煙を吐き出す。


璃夏(リカ)『だけどあなたは私に、すべてをくれました……。』


滝沢がリカの方を向き、血まみれのリカの顔を見る。


璃夏(リカ)『これからの私のすべてを、滝沢さんにさしあげます。』


滝沢がリカの頭の上にポンっと置くと、歩いて行く。


璃夏(リカ)『滝沢さん!』


滝沢の足が止まる。


璃夏(リカ)『帰って、私を抱いてください。』


滝沢は振り返り、リカの顔を見たがすぐに歩き出す。


リカは、白鞘の鞘を拾い日本刀を鞘にしまい小走りで滝沢の後を追う。