滝沢は細道をリカの方に向かって歩いて来る。
リカはすれ違うのが怖かった。
何故なら滝沢の目は獲物を狙う隼か鷹のような目でこちらを睨めつけながら迫って来たからだ。
鋭い眼光に恐れながらも
『きっと気のせい、こっちなんて見てない、大丈夫』
そう自分に言い聞かし滝沢の方に向かって歩いて行く。
目を合わせないですれ違うリカ。
すれ違った瞬間心の中でリカは安堵した。
次の瞬間リカは目を見開いた!
後ろから大きな左手でリカは口を塞がれた。
リカは動けなかった。
いや動いたところで無駄な事は解った、何故なら口を塞いだ手の力
体が宙に浮くんじゃないかと錯覚する程だったからだ。
そして顔の右側から目の前に赤黒い何かが写りこんで来た。
僅かな光で少し見えたその赤黒い物は、まだ新しい血がベッタリとついた刃物だった。
リカは恐怖のあまり硬直していると耳元で男の声がした。
滝沢『ああなりたく無かったら、声を出すな』
そう言って目の前の血のついた刃物が何かを指した、指した先を見たリカは細かく震え出した。
細道の先に人が倒れていた、その周りに大量の血らしき物も、滝沢が言葉を続けた。『状況、理解出来るな?』
リカは震えながら首を縦に頷く、口を塞いだ手が離れる。
滝沢『そのまま歩け』
そう言われ倒れた人の横を通り過ぎる。
たぶんもう生きてはいない、リカは直感的にそう思った。
滝沢『その先の黒い車に乗れ』
細道を抜けたところに大きなピックアップトラックが停まっていた。
リカは大人しく言われた通りに助手席に乗る。
滝沢が運転席に乗りエンジンをかけた瞬間猛スピードで走り出した。