リカ『えっ………。』
リカは、項垂れ…膝から崩れ落ちた。
滝沢はタバコに火をつける。
しばらく沈黙があった。
リカ『嘘よ…』
リカは、ゆっくり立ち上がり滝沢の方に歩いて行く。
ソファーに座る滝沢の横に座り、滝沢の腕を両手で持ち
リカ『嘘よっ!なんで…そんな……。』
と言い、両目から大粒の涙が流れる。
滝沢『望月綾…。』
リカ『え?。』
リカは、泣きながら滝沢を見る。
滝沢『聞き覚えがないか?』
リカ『望月…と言えば洋太の会社が、望月ホールディングス…』
滝沢『そうだ。そこの代表取締役の一人娘が、望月綾だ。』
リカ『……。』
滝沢『その女とお前の旦那は、4年前からデキてる。……もちろん代表の父親には内緒でだ。』
リカ『えっ!?』
滝沢『一部上場企業で役職まで行ったお前の旦那だが、お前と離婚したら左遷か降格もしくは両方、しかも今後の出世は無くなる。
もし綾とのことがバレても懲戒免職、そして考えついたのがお前との死別だ。』
リカは、もう言葉が出なかった。
滝沢『死別ならば、しばらくして望月綾と結婚し、望月家に入り込めば役員になり地位も確保出来て将来も安泰…。』
滝沢『それが俺にお前を殺す依頼をした理由だそうだ。』
滝沢の腕を掴んでいたリカの力がなくなり、地面に落ちる。
リカは、無言で立ち上がりベッドの方にフラフラと力なく歩いて行く。
ベッドの上の通帳を取り、滝沢の前のテーブルに通帳を置くと
リカ『この通帳のお金で、結城洋太を殺してください……お願いします……。』
リカは、土下座に近い状態で依頼し嗚咽をあげる。
滝沢は、タバコを灰皿に捻り消し
滝沢『断る。』
リカの嗚咽しながら
リカ『なんでですか!?じゃあ、殺してください私を!今すぐ!』
滝沢『……俺に依頼した奴らは、後に必ず不幸になる。』
リカ『不幸になってもいい……。このまま生きてなんていけません……。』
滝沢『それに、全て聞いたら新しい人生をしっかり生きて行く約束だ。』
リカ『いきなりこんな現実を受け入れるなんて…』
滝沢『お前の整形した顔は…あと5日で椎名璃夏の顔になる。』
リカ『……。』
滝沢『5日経ったら、ここから出て新しい人生を受け入れろ、それまでは泣くなり弱音なり好きにしろ。』
リカ『もう私は、友達にも親にも会えない……これからは独りぼっちなんですね。』
滝沢『孤独も悪くないもんだぞ。』
きっと私が想像も出来ないくらいの孤独を滝沢は、味わって来たのだと思った。
あと5日……。
私も元々、孤独だったのかもしれない。
洋太とは仲は悪くはなかったが、お互いに関心が無くなっていたのだろう。
だから4年も前からの浮気にも気づかなかった。
私よりも、もっと孤独なこの人は、私の気持ちを誰よりもわかった上で私の全てを奪い、私を自由にしようとしてくれた。
滝沢『俺は昨日、一睡もしてないから今から寝る。』
と、滝沢がソファーから立ち上がろうとした瞬間、リカが滝沢をソファーに押し倒し馬乗りになる。
滝沢『何しやが……!?』
リカが両手で滝沢の顔を持ち、唇を合わせた。