バイトが終わり、夫の洋太にLINEをしたが既読ににならない。


リカ『あれ?珍しい。』


普段ならすぐに既読になってすぐに返信が来るのだが、この日は既読にすらならない。


家までの帰り道を歩くリカ、未だLINEの返信がないのを不思議に思いながら帰路に着く。


玄関の鍵穴にリカは鍵を刺し回す。


リカ『あれ?開いてるし!』


玄関のドアを開け中に入ると


リカ『洋太ぁー!鍵開けっ放し!』


と言いながら靴を脱ぎ中に入る。


廊下を歩きリビングに向かいながら


リカ『ねぇー!いるんでしょ?洋太』


リビングに入るが洋太の姿がない。


リビングの電気は付いてる。


リカ『洋太?隠れてるの?』


テレビの方に行くリカ


リカ『えっ!?』


ソファーの下に、血まみれの洋太が倒れていた。


リカ『いやぁ!洋太!?洋太!?』


リカは崩れ落ちるが、慌ててバッグから携帯電話を取り出して電話をしようとすると、目の前に滝沢が立っている。


リカ『!?』


滝沢は、ニヤリと笑い


滝沢『行くぞ。』


リカは自分の下が熱くなってることに気付く。


リカ『ど…どこに、です』


遮って滝沢が言う。


滝沢『次の仕事だ。』


リカ『はい…。』


なぜ?なぜ私はこの人の言うことを聞いてしまうんだろう?


リカ『ようた……。』


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ベッドの上で寝るリカ、夢から覚め目がゆっくり開く。


リカ『夢……。』


目覚めたリカは、ここが何処かわからなかった。


上半身を起こす。


リカ『え?顔が痛い…』


自分の顔を触ると、口の上、鼻、目の上、おでこ、ほう骨、いや顔全体にガーゼ?か何か貼られている。


どうなってるのか理解が出来ない。


滝沢が腰にバスタオルを巻いて風呂から出て歩いて来る。


リカは、そこでようやく滝沢のベッドにいることに気付く。


滝沢『目が覚めたか?』


リカ『はい。まだ少しボーっとしますけど』


目が見にくいことにもリカは気づいた。


滝沢『全身麻酔をしたからな』


滝沢は、スウェットを履きはじめる。


リカ『私の顔…痛いんです、これはどうなってるんですか?』


ソファーの前のクリアケースを取り滝沢はそのクリアケースをリカのいるベッドに置いた。


滝沢『この中にお前の全てが入ってる。』


リカは、クリアケースを手に取る。


リカ『全て?』


クリアケースの1番上にあった免許証を、リカは取り出して見る。


リカ『椎名璃夏……誰ですか?』


滝沢『その中に、免許証、マイナンバーカード、預金通帳、印鑑、それと生まれてから最近までの経歴が書いてある紙が入ってる。』


リカは、理解出来なかったが一応クリアケースから全部取り出し、ベッドに並べる。


滝沢『本籍、住所は免許証に書いてある場所だ。それから…』


リカ『ちょっ、ちょっと待ってください。』


滝沢『なんだ?』と滝沢はめんどくさそうに言う。


リカ『意味が…全然理解出来ないんですけど……この椎名璃夏さんと言うのはそもそも誰なんですか?』


滝沢はリカを睨みつけて『だから今、説明してるだろ。』


リカ『あ…はい。』


滝沢は、ソファーの方に歩いて行きソファーに腰を下ろす。


滝沢『3日前、結城リカはバイトが終わって、足取りはわかってないが近くの山の中に行った。』


リカは、まだ意味が理解出来ないがとりあえず聞くことにした。


滝沢『次の日の朝、結城リカは焼死体で見つかった。事件か自殺かはわからない。』


リカは、たまらず何か言おうと滝沢を見たら滝沢が睨みつけてるのでやめた。


滝沢『で、昨日の夜、結城リカの葬式が終わった。』


リカ『!?』


リカは、滝沢と大野勇次郎のやり取りを思い出した。

『こいつを消してくれ。』
『こいつの新しい戸籍をくれ。』


あの時のやり取りは、このことだったのね。と、リカは理解した。


滝沢が、タバコに火をつける。


滝沢『あの若き政界のエースは仕事が早かった。』


リカ『………。』


滝沢『で、その預金通帳に500万入ってる。政界のエース様がお前に餞別だと言っていた。』


リカ『あなたは、人の人生を何だと思ってるんですか?』


リカの中で、何かが弾けた。