滝沢は、車のエンジンを掛けアクセルを踏み込んだ。


一方、リカは非常階段を裸足で駆け下りる。


生きながらえる為にここまで来た!


生きながらえたとしても、あの男にここで捕まれば犯罪者!


リカは無我夢中で階段を駆け下りる。


地下駐車場を猛スピードで移動するピックアップトラック、非常階段の鉄扉の前に停る。


リカは、地下駐車場に繋がる鉄扉を開けて滝沢の車に乗ろうと車のドアを開けた。


追って来た男が、リカのドレスの背中部分を掴む。


滝沢『掴まれ!』


滝沢が、手を伸ばすとリカがその手に掴まる。


リカの上半身は何とか車内だが、足は車外に出ている。


滝沢は、目一杯アクセルを踏み込み車はホイルスピンをしながら急発進する。


リカが着ているドレスの背中のチャック部分が弾けて男の手が離れた。


猛スピードで加速しながら滝沢はリカを片手で車の中に引っ張り込む。


リカ『はぁはぁはぁ!』


滝沢『早くドアを閉めろ!』


はっ!?と、我に返ったリカはドアを両手で閉める。


滝沢が電話を取りだし電話をかける。


滝沢『おぅ!用意出来てるか?………』


『チッ!』


滝沢『昨日行くと言っただろ!!5分で用意しとけよ!?』


リカは、酸欠と頭がパニックになっていたので運転席の滝沢のやり取りどころではなかった。


滝沢は、また直ぐに電話をかける。


滝沢『ジジイのところに車を持って来い!』


電話を切ると、エンジン音とタイヤのロードノイズだけが聞こえる車内。


リカ『わ…私は……人を殺したんですか?』


滝沢『あ?』


リカ『………。』


滝沢『お前は、エロじじいに太もも触られただけだろ?』


リカ『…でも!間接的に…』


遮る様に滝沢は


滝沢『その後のことは、お前には関係ない。』


リカ『………。』


滝沢『これが…俺の仕事だ。』


滝沢たちが乗る車は、街を抜け少し田舎の診療所に着いた。


リカが診療所の看板を見る。


リカ『沖田診療所…』


自宅兼診療所の開業医みたいだ。


滝沢とリカは車から降りて診療所の入口から中に入る。


入るなり滝沢が


滝沢『おい!ジジイ!どこだ!?』


沖田『ほいほいほいほい!』


診療所の奥から、小太りのおじさんが小走りで出て来た。


滝沢『用意出来てんのか?』


沖田『あーあーあー、出来てるよ、やいやいうるさい奴だな~相変わらず』


沖田は、リカに目をやると


沖田『あらあら可愛いお姉ちゃんじゃないか、お前の彼女か?』


と言うと、沖田は滝沢の目の前で小指を立てる。


ボコッ!


沖田『いでっ!』


滝沢は沖田の尻を蹴り飛ばした。


滝沢『早くやれ!ジジイ!』


沖田『わかったわかった!』


沖田は、リカの方を向いて手招きをする。


沖田『じゃあ、お姉ちゃんこっちおいで、こっち』


滝沢『おい、これだ。』


滝沢は沖田にカードらしき物を渡す。


沖田『ほぅほぅ、なるほど。』


3人は診察室に入る。


沖田『お姉ちゃんは、そこの診察ベッドに横になっといてちょうだい。』


沖田は、さっき受け取ったカードらしき物をスキャナーに入れパソコンで見て何やらやっているようだった。


沖田は立ち上がり、リカの寝てる診察ベッドの横に来た。


沖田『じゃあ、お姉ちゃんはじめるよ。』


リカ『えっ!なにを』


リカが言い終わる前に、沖田は医療用マスクをリカに被せる。


一気に周りが霞む


滝沢がこっちを見ていた。


意識が遠のきながら、滝沢の目が悲しそうに見えた。


それが、最後の記憶……