地下駐車場の車の中。
滝沢はタバコに火を着け、電話を出し掛ける。
リカが持ってる携帯電話が自動で繋がる。
滝沢『聴こえるか?』
リカは、大野のソファーに向かって歩きながらBluetoothを指で1回叩く。
滝沢『お前の手の甲、それと足、さっき塗った場所だ、そこに触られたらBluetoothを3回叩け。』
大野『ここここ!ここに座りなさい。』
大野は、自分の座っている横を手で叩きながら言う。
リカ『失礼します。今日は来店ありがとうございます。』
リカは、ニコリと微笑み会釈しソファーに座る瞬間にBluetoothを指で1回叩く。
大野は細身ながら声は大きく、まだまだエネルギッシュだ。
話すことが好きらしく、ずっと飲みながら総理時代の武勇伝とやらをずっと喋っている。
リカは、相槌を打ちならがら微笑んだり笑ったりとしながら大野の様子を見る。
大野『そうだ!フルーツ盛り食べるかい?えみり(リカ)ちゃん』
リカ『えっ!よろしいんですか?大野先生!』
響『えみり(リカ)さん、良かったわね、先生に気に入って頂いて』
リカ『はい!ここに来て初日に大野先生に出会えて、ほんとに出会いに感謝しています。』
このやり取りを聞いて1人のボーイが、バックヤードの方へ歩いて行く。
ボーイが歩いて行くのを目で追ったリカは、何か違和感のある男に気がついた。
ボーイの制服ではなく、大野の秘書と思われる男は大野の左後ろに立っている。
大野『じゃあ、えみり(リカ)ちゃん、出会いに乾杯しようじゃないか!あっはっは!』
リカ『では、大野先生との出会いにカンパーイ!』
他にいたホステスと響が、カンパーイ!と言って一斉にグッと酒を飲む。
しばらくすると、大きい入れ物に入ったフルーツ盛りをボーイ2人がかりで持って来てテーブルのど真ん中に置く。
大野『えみり(リカ)ちゃん、来たぞ!いっぱい食べなさい。』
リカ『はい!ありがとうございます。』
ニコリと微笑み、そう言うと苺を手に取り食べる。
リカ『美味しいです!私、苺が大好きなんです!』
大野『そうかそうか!良かった良かった!はっはっは!』
大野の顔は真っ赤で、かなり酔ってきてるようだった。
大野『えみり(リカ)ちゃん、ゴルフはするのか?』
リカ『ゴルフですか?少しだけしたことがあります。』
大野が、ドレスの下から手を入れてリカの太ももを触りながら顔を近づけて来た。
大野『今度一緒に行くか?ん?』
大野の耳元でリカが
リカ『ご一緒させて頂いてよろしいんですか?』
と囁く。
滝沢に足を触れられたときと違い、大野に触れられても何も感じなかった。
大野『可愛いなぁー!えみり(リカ)ちゃんは、はっはっは!』
と言うと、大野の手がリカの太ももを撫で回す。
リカは、髪の毛をかきあげる瞬間に親指でBluetoothを3回叩く。
滝沢『トイレに行くと言って、車まで来い。』
リカは、大野の顔を覗き込み
リカ『大野先生、お化粧室に行ってきてよろしいですか?』
大野『おー!おー!行って来なさい。』
リカ『ありがとうございます。』
と、大野に微笑む
大野『早く帰って来ないと私が苺を全部食べてしまうぞ?はっはっは』
リカ『大野先生!意地悪言わないで苺置いといてくださいね。』
そう言うと、リカはソファーから立ち上がる。
大野『はっはっは!わかったわかった、ここのピーナッツでも食べながら待っとるから、はっはっは!』
と言いながら、ピーナッツを数個手に取り大野は口に掘りこんだ。
ソファーから離れるとき、リカは響の方を見た。
響は、リカに優しく微笑み小さく会釈した。
トイレの方に歩き出した。
先程の違和感のある男と目が合う。
その時、ガシャーン!と言う音が鳴り響きホステス達の悲鳴が上がる。
リカは、一瞬後ろを振り返る。
すると違和感のある男が、リカの方に走りはじめた。
リカは、バックヤードに入り非常階段を駆け下り地下駐車場に向かう。
非常階段の上から、駆け下りる足音が聞こえる。
リカ『追われてる!』
滝沢『急げ!』
リカは、ハイヒールを脱ぎ捨て両手に持って更に駆け下りる。