「多分、クラル様は他の魔王に強力な暗示をかけられてると思うんだ。あの時は一時的に元に戻っただけで、また僕らを襲ってくるか分からない」

魔法薬を調合しながら、僕はそう言った。僕が今作ってるのは、すべての効果を打ち消す薬。

「……完成」

僕は、完成した魔法薬を持ってクラル様に近づく。クラスメイトは、何が何だか分からないみたいでさっきから黙ったままだ。

「お願い。効いて……」

ゆっくりと、クラル様の口に魔法薬を流し込んだ。その時、クラル様はうっすらと目を開けて僕を見る。そして、魔法薬を飲み込んだ。

「……」

僕は、クラル様の様子を見つめる。クラル様は、体を起こすと辺りを見渡した。

「……ここはどこ?」

「……誰!?」

クラル様の質問に答えようとした時、教室のドアが開いて先生たちが入ってくると戦闘態勢になる。

「僕は、魔王のクラルと言います」

立ち上がったクラル様は、自己紹介をすると微笑んだ。だけど、先生たちは戦闘態勢を解こうとしない。

「……魔王が何をしに来た?」

「僕でも良く分からないんだ。気が付いたらここにいて……」

「はぁ?嘘に決まってる」

「嘘じゃないんだ」

「魔王の言葉なんて、誰が信じるか!」