「……いえ……いつも通りですけど」

「そう?なら、良いけど……ルーチェ、命令だ。今すぐ戻れ……そして、僕と一緒に世界を滅ぼそうよ」

「……」

僕は、クラル様と違う気がして見習い用の杖を構えて戦闘態勢になる。それを見たクラル様は、床に膝を付いた。

「……ルーチェ。賢明な判断だ……絶対に僕の手を取るなよ」

顔を上げたクラル様の頬に、汗が伝う。

「一緒に世界を滅ぼしたりなんかしたら、僕が許さないから……っ」

クラル様は、頭を押さえるとしゃがみ込んだ。僕は、そんなクラル様に近づく。

「来るな!ルーチェ、逃げろ……!」

「……クラル様が考えてる事は、僕には分かりません。でも、クラル様は本気で世界を滅ぼそうとするような人じゃない……クラル様、あなたは両親に捨てられた僕を拾ってくれました。名前のなかった僕に、名前をくれました……そんなクラル様を、僕は助けたいんです」

「……」

僕と目を合わせたクラル様は、ふっと微笑むと僕の方に向かって倒れてきた。クラル様の体を支えて、僕は「必ず助けるから」と呟いた。



「クラルさん、大丈夫なのかな……」

教室の隅の方で眠ってるクラル様を見つめて、目を覚ましたアーサーとティムは心配そうな顔をする。