男は、ローザンの手を掴んだまま、僕に迫ってきた。
…一歩…また一歩…
…ザッ…ザッ…ザッ…
ローザンは意識が朦朧としているようだ。
男に何も抵抗しないまま、うなだれて、ただ引きずられている。
ローザン、怖い…。
助けて……
男は、僕に手を伸ばした。
嫌だ……!!!
身動き出来ない…。
ローザン!!!
助けて!!!
―――その時、閉じていたローザンの目が開いて、
そして瞬時に、
僕に伸ばしかけた男の手を蹴り飛ばしてくれた。
男は一瞬怯み、そして尻餅を着いた。
………。
「ローザン!ありがとう!!」
「――リヒト…!」
ローザンの目が、必死に僕に何かを訴えた。
そして、叫んだ。
「リヒト!お前だけでも逃げろ!!」
えっ……!?