森安さんは俺と別れた後、一旦警察へ向かったそうだ。


それは桃田さんのことではなく、俺が空き家付近をうろついていることを警戒してのことだった。


そして１人の警察官と共に空き家へ戻ってきたとき、再び俺が現れた。


警察はすぐに俺に声をかけようとしたらしいが、森安さんはそれを止めた。


一応先に事情は説明していたし、２度目は無断で家に入るようなことはしなかったからだ。


その後、森安さんと警察は２人で俺と桃田さんの後をつけた。


森安さんは途中で警察に「もう大丈夫そうですから」と断ったらしいが、俺と桃田さんという組み合わせに違和感を抱いた警察はそのまま一緒に俺たちの様子をうかがうことになった。


結果的にそのおかげで俺は助けられたのだ。


出てくるのが遅くなったのは桃田さんがナイフを持っていたため、応援を呼んでいたかららしい。


「本当にありがとうございました」


警察署で事情を説明した後、俺は外で待ってくれていた森安さんへ頭を下げた。


なんと礼を言えばいいかわからない。


言葉では足りないくらいだ。


森安さんは真剣な表情で俺を見つめて「まだ、やることがあるんじゃないの？」と、聞いてきた。