1枚のカードを引いて、絵柄の役をするというルールなのだが、何度もカードを捲って見ては、お姫様が出ないと床に戻す少女がいた。


「これやだ。これもやだ。お姫様はどこなの?」


女子カースト、トップの美那(みな)は、金髪でギャル風の派手な女の子。

女子達は美那が怖いので、見て見ぬフリ。

先生は役柄に分けて、園児達を整列させているため、こちらを全く見ていない。


やりたい放題の美那を横目に、カードの残りは5枚になっていたが、渚はまだ迷っていた。


「お姫様はまだ1枚残ってるよね……どれかな……?」


渚が呟いた瞬間、美那に突き飛ばされてしまう。


「ちょっと邪魔っ!!」


「きゃっ!!」


渚が倒れてる間に、他の女子達がカードをを引いたので、残り2枚になっていた。


美那が2枚のうちの1枚を捲ると、意地悪な家族の絵柄が描いてあり、渚の目の前にあるカードがお姫様。


「こっちでもないや。じゃあ渚ちゃんの前のやつがお姫様っ!!」


渚が先にお姫様のカードを掴んだが、走ってきた美那が怖い顔で、渚を睨み付ける。


「それ私のカードだから返して?」


「え……やだよ……」


カードを抱き締めてモジモジしている渚から、カードを奪い取ろうとした美那。


「私のだから返してって言ってるでしょっ!!」


二人の間に慌てて入って来た涼が、両手を広げて渚の前に立った。


「渚ちゃんがお姫様に決まったんだから、諦めろよっ!!」


こうして涼が渚を守ってくれた。