そんなことがある一方で。
ロイのことはやはり話題になっていた――主に女の子たちの間だが。
街中でふいに呼び止められ、またかと苦笑しながらも立ち止まる。
『いいなあ、私も近くで見たかった』
『あんまり言うと、怒る人もいるけど……すっごく格好よかったわよ! 』
誰だって、格好いい男の子が好きだ。
もちろん好みは人それぞれだが、生憎――ジェイダにとっては気分の悪いことに――ロイは万人受けする整った顔立ちをしており、仕草も他人に対しての接し方も王子様そのものだ。
『あの王子様から口説かれるなんて。大変だっただろうけど、羨ましいわ。ねえ、見ていない私にも教えてよ。どんなひとなの? 』
そう尋ねられ、何故か言葉を詰まらせた。
『どんなって……』
(あれ……? )
ロイのことを想うと、好きで逢いたくて、胸がいっぱいになる。
だというのに、少しも言葉が出てこない。
(どうして……? )
思い出せない訳じゃない。
彼への気持ちは薄れるどころか、いっそう強くジェイダの心を占めたままだ。
『……ごめん、私……っ』
変だと思われただろうか。
彼を独占して教えたくないのだと、失笑されているかも。それでも、駆け出さずにはいられなかった。
途中、今日も広がる青い空を見上げないように命令しながら。