最後に…。これが一番の謎だったんだけど…
転校してきて数カ月経っても彼には友達(のような人)がほとんどいなかった。

最初の怖い反応は何もあの時だけではなく、彼は基本的に機嫌が悪そうなことが多かった。
クラスのお調子者が声をかけても、サッカー部の人気者が声をかけても
女子が話しかけてもちょっと鬱陶しそうな顔で端的な回答をするだけ。
どうやらうるさいこと(人)が苦手のようで特に女子に対しては「うるせえ」が口癖だった。

だから彼は休み時間もいつもひとりーーーーと思われがちだが、
実はそんなことはあまりなく、志保たち女子が面白がって声をかけたり
本当は五十嵐柊ともっと仲良くなりたい男子勢が声をかけたり
なんだかんだ彼は一人じゃなかった。


そして見ているうちに私は気づいた。
彼は本当は仲良くなりたいのだろう、と。
だけど人見知りで人付き合いが苦手だから、そっけない態度をとっているのだと。

その証拠に、五十嵐柊の扱いに1番こなれていた志保が
あえてうるさくちょっかいをかけたりすると
怒りながらもたまにくしゃっとした笑顔を見せるのだった。

最初は怖がって話しかけることもしなかった私も
なんだよ、ただのツンデレかよ、って。
ちょっとずつ壁がなくなっていったような気がしていたんだ。