それから私は不思議な転校生、五十嵐柊を目で追う機会が増えていた。
数カ月間ぐらいは一言も会話をしたことはなかったが
同じクラスのクラスメイトレベルで彼のことを少しずつ分かり始めていた。


まず、彼は朝が弱いらしく、週に2回は遅刻をする。
ただ、1時間目には間に合うぐらいの可愛い遅刻で
本気で学校をさぼったりはしないタイプだった。(意外と意気地なし?)


それから彼はサッカー部に入部していた。
どうやら小学生の頃からサッカーをしていたらしく
“絶対に部活に入らなければいけない”という中学ルールの為に仕方なしに入ったようだ。
その腕前はサッカー部の男子曰く、
「下手ではないがいまいち真剣にやらないから上手いか分からない」とのこと。

当時の男子といえば“ちょっとやる気ないぐらいが人気”という謎の習わしがあり
彼に限らず体育で本気を出す男子は少なかった。
ただその中でも遠めにわかるぐらいにやる気がなさそうだったのが五十嵐柊の特徴だ。


つづいて。彼は成績だけはそこそこ優秀だった。
あまり見た目に頭の良さはでていないが、
クラスでもトップクラスの成績を収めていてそのギャップには好印象を持った。
ちなみに学力的には私も近しいレベルで、勝手にライバル視していた記憶がある。