いつの間に取り出したのか、意味深な含み笑いと一緒に視界に翳されたのは、二枚のライブチケットだった。


「じゃーん! シュティレのクリスマスライブのチケット、当選しちゃった!」


最初の頃はどこか大人びた印象が強かったけれど、こういうときは年相応の男子だよなぁと微笑ましくなったのち、事の重大さに気がついて勢いよくテーブルに手を叩きつけ、思いっ切り身を乗り出した。


「えっ嘘でしょ!? あれすっっごく倍率高いのに! なんでなんでなんで? 待って超凄くない!?」


ここまで我を忘れたのは、ひょっとすると今日が初めてかもしれない。それくらい、衝撃的だったのだ。


シュティレのライブチケットは、基本的に倍率が高い。まぁ人気のバンドだから必然的にそうなってしまうのだが、ファン数の割に毎度毎度ライブハウスのキャパシティが小さく、某転売サイトでは、元の値段の3倍にまで跳ね上がっていたりもする。

「俺も正直びっくりしてる。ウェブで先行予約やってたから、駄目元で応募してみたら抽選で当たったんだ。チケット一枚余ってるし、一緒に行く?」

「えっ、いいの!?」

「他に行く相手もいないし、シチューのお礼」