「ちょっと飲みもの取ってくるから、適当に座ってて」


渚の部屋に通されてすぐに一人きりにされ、カーペットに腰を下ろしてから遠慮がちに周囲を見渡す。

カーテンやカーペット、ベッドカバーが青系の色で統一された、男子高校生にしては綺麗に片づけられたシンプルな部屋。

ローテーブルの上に無造作に積み重ねられたCD達や壁に貼られたアーティストのポスター、それと黒いオーディオ機器が、なんとなく渚らしかった。

その中で若干の異色を放っているものが、ひとつ。

なんの飾り気もない、アクリル製の写真立て。肝心の写真は特に入っていない。


……飾る写真がないなら、誰かと一緒に取ればいいのに。

私も似たようなことをしているから人のことは言えないけれど、きっと私と違って写真を撮る相手はいくらでもいるのだろうから、わざわざ空っぽの写真立てを置いておく必要はないはずだ。


そのときはそう思ったものの、程なくして二人分のコップを手に持った渚が部屋に戻ってきたので、その考えは頭の隅に追いやられた。