「…着いた。」
恐る恐る階段を登って、やけに重たく見えるドアに手をかける。
ギィ…と音を立てたドアを開け外に出てみると、春特有の心地よい風が吹いていた。

誰もいないみたい…。

私は適当な場所に腰を下ろし、お弁当を広げた。
もう高校生になったんだから、という理由で自分で作ることになったお弁当。
お父さんもお母さんも美味しそうに出来たねって褒めてくれて嬉しかったな…。

今のところ、親以外に見せる人なんていない、けど……。
やばい、ちょっと泣きそうかも…
溢れそうになる涙を、流すまいと上を見上げた。

それでも悲しくて、情けなくて、ついには嗚咽が出始めた。
「うっ、ひっく…ごめんなさ、ごめんなさい…。」

「…なんだよ、お前。」

突然、私しかいないと思っていた屋上で、私の嗚咽に誰かの声が重なった。