ローファーを下駄箱から取り出すと、ヒラリ、白い紙が足元に落ちた。

“音楽準備室”

ただそれだけ書かれた乱雑な筆跡の主は、あいつしかいない。

「はぁ・・・」

下駄箱にローファーを戻してあたしはさっき来た道を引き返す。

ほんとは帰りたい。
だけど、武には逆らえない。
あたしの何かがそうさせる。
その何かは、全くわからないのだけれど。



ガチャンッ
放課後に音楽準備室に来た時はたいてい鍵を閉めなければいけない。

でも。
今日はシたくない。

だってまだ・・・
身体中が貴也さんの感覚を覚えてる。

リアルに思い出せる。

あたしはそっと、自分の身体を両手で抱きしめた。