「…うそ」

「嘘でこんなこと言わないわよ?普通」

「…」

あたしが黙りこくると、麻里はそのまま話を続けた。

「それで、その人との間に子供出来ちゃって…産んだのが…流」

「流って」

あたしの中に1人の幼い男の子の姿が浮かぶ。
確か流くんは麻里の弟だって…武が言ってたの聞いた気がする。

「弟じゃないの、あたしの息子…なの」

嘘…でしょ?
だけど、麻里の目は嘘をついているようには到底思えなくて。

「その人とは…?」

「一度は別れたよ。でも、やっぱり離れられるわけなくて…今でも付き合ってるっていうか…何て言えばいいんだろうな、この関係」

「…奥さんにはばれてないの?」

あたしが今最も恐れていること。
だけど、思わず聞いてしまったことを次の瞬間あたしは後悔した。


「ばれたよ、もちろん。だから1度別れたのよ…それなのに、彼は奥さんを捨てたの」