武の言葉を忘れたくて無心で走っていたら、あたしはいつのまにか屋上へとたどり着いていた。

「ふぇ……っ…ひっく…っ…」

悔しさとむなしさがいっぺんに押し寄せてきたような感覚。
武の言うことはもちろん正論。
いつも正しいからこそ、悔しいんだ。
自分に腹が立つんだ-…

キィー…
「倫、いる?」

あたしが振り返ると、屋上のドアのところには携帯を片手にあたしの元へとやってくる麻里の姿。

「麻里…」

「よかった、何度電話しても出ないんだもん」

「あ…」

ブレザーのポケットを探ってみれば、いつも入っているはずの携帯がない。
そういえば、充電したまま寝て、そのままじゃん。
充電器に刺さったままの携帯を思い出してバツが悪そうな顔をするあたしを見て、

「ま、そんなことだと思ったよ。それに」

「ん?」

「あんたが携帯持ってくるとセフレからのメールでうるさいから。別にいいけどね?」

コロコロと笑いながら、ポン、とあたしの肩を叩いて言った。