鞄を元の戻すと、武はいきなり、

「倫、次さーぼろ?」

と言ってきた。

次、数学だし、あたし出ないとやばいんだよね。
つーか、武とはサボりたくないし。

「やだ」

ぶっきらぼうにあたしが答えると美希たちってば、あたしの腕を掴んで

「倫、行け」
キラキラと微笑んできた。

「え…?」

命令ですか?
いや。
行きなって言ってるわりにはだいぶ目つきが怖いよ?
しかもあたしを引っ張る手…痛いもん。

「行くぞ」

だけど。
そっとあたしの手を握る武の手は、実は誰よりもあったかいってことをあたしは知ってる。

だから、いつも…
あたしはその手を握り返してしまうんだ―…