エリカがそう言い、テーブルの上に置かれてサンドイッチの山を指差す。いつもならこの笑顔に胸を高鳴らせているはずなのに、どうしてこんなにも苦しくなるんだろう。

「ノワール、コーヒーか紅茶どっちにする?」

「ノワール、サンドイッチ皿に取っておくぞ」

リオンもカズも、優しい。その優しさを信じられなくなっている。否、この二人だけじゃない。この空間にいる全員を、僕は今敵ではないのかと疑っている。こんなこと、前世で一度あったっきりなのに……。

「ノワール、どうした?何かあった?」

メルキュールに不意に訊かれ、ドキッとする。気が付けばリビングは静まり返っていて、僕のことを全員が見つめていた。

「何だかノワールさんらしくないですね」

シャルロットがそう冷静な声で言うと、「それ、俺も思ったぞ!」とカズが手を挙げる。そしてエリカとリオンが首を縦に振り、僕はメルキュールと「何があったの?」と真剣な顔で訊かれた。