「う〜ん……私吸血鬼になってから京夜くんの血を吸ったからなぁ……」
え……。
「人間が吸血鬼になれるんですか?」
「まぁ……な。契約手順が中途半端だと吸血鬼と結ばれてる人間……いや、吸血鬼が血を吸った人間は吸血鬼になる」
……てことは。
「中途半端でやれば……!」
「アホだな〜。あれは京の寿命が間近みたいなもんだったからで、あと2年もある今、すぐ雷斗が吸血鬼になるなんて無理だよ」
くっそ……。
「そういえば、パパはママの血を最初に吸ったのってどんな時だった?」
「確か千桜が料理してる時、包丁で指切った時だったな」
そんなことがあったのか……。
いや、でも月姫は割としっかりしてる方だから指切ったりしないし。
たまにドジだけどね♡
「私がわざと怪我して血を出せば……」
な、なに言ってんの!!!???
「ダメ!絶っっっっ対ダメ!!」
「そんなためなくても……」
「だって、月姫の綺麗な身体に傷が入るってことだよ!?嫌だ!!」
「わ、わかったから、落ち着こーよ」
落ち着けるか!
「そういうとこは千桜そっくりやなぁ」
「え!私?」
「躊躇なく京のために犠牲になるもんね〜」
「もうちょっと自分を大事にしてほしいんだけどな……」
このふたり、若い頃どんな感じだったんだろ。
「ねぇ、ママとパパって学生の時どんな感じだったの?」
え!
まさに今俺が思ってたことを!
「ん〜、今と変わらないんじゃないかな?」
「あんま変わったことねぇな」
「お互い初恋だしね〜」
「せやな!変わったことったら年齢や!」
俺と月姫も、こんな風になれるかな。
いや、ならなきゃな!
世界で一番可愛い彼女なんだから。
✟月姫side✟
「いやー、夏休みはいいね!ずっと月姫ここにいてくれるしっ」
と、ベッドの上でアイスを食べる雷斗。
雷斗、アイス溶けて落ちたらどうすんの……。
てか、なんかおかしいな……。
さっきから、身体が変だ。
「月姫もアイス食べる?」
「んー、私はいい」
なんかそんな気分じゃないし。
ただ……なんだろ?
自分が、自分じゃないみたいだ。
なによこれ……。
発情っぽいけど、でもこの前のと違う。
「……なぁ、さっきからなに考えてる?」
「へっ?」
思わず間抜けな声が出てしまった……。
雷斗を見ると、いつものニコニコ笑顔ではなくて。
「なにって……」
「上の空っつーか、なんか考えてる」
「っ……」
なんで、そんなこと気づくの。
なんでも、私の事知ってるみたいに……。
「まぁいいけどさ……俺に話したくないなら」
「あ……」
机の上に置いてあったプリントを見た雷斗。
お、怒っちゃったかな……。
そう思った時。
「いてっ」
雷斗が突然プリントを落とした。
「どうしたの……!?大丈夫?」
「あー平気!手ちょっと切ったみたい?」
えへへ、と笑う雷斗。
手のひらを見ると、血が出てて。
ドクンッと胸が鳴った。
血……。
「……月姫?」
ダメ、血なんて吸っちゃダメ。
なのに……。
身体が、逆らうように動いてく。
吸いたい、吸いたくない、吸いたい……。
吸いたくない、のに……。
✞雷斗side✞
目の前の月姫は、吸血鬼の顔をした月姫だ。
俺の手のひらから出てる血をペロッと舐め、牙を入れた。
呼んでも返事がないってことは……。
今の月姫は、吸血鬼の本能で動いてるってことだよね。
これで俺が月姫の血を吸ったら……。
月姫の呪いは解ける。
ホントはやりたくないけど……。
「月姫、ちょっとごめんね」
「っ!?いっ……」
月姫の唇を噛んで、切れた唇から出た血を舐めて飲んだ。
その瞬間。
──パァァァァっ!
「「っ……!」」
月姫の身体から眩しい光が出てきて、思わず目を閉じた。
なんで光が……っ。
しばらくして目を開けると、もう光はなくなっていた。
「っ雷斗……呪い、解けちゃった…………」
「え……」
放心状態の月姫。
今、呪いが解けたって言った……?
呪いが、解けた……!?
「やったーー!」
「わっ!?」
思い切り月姫に抱きついてベッドに押し倒した俺。
「呪いが解けたってことは、これから何十年も一緒にいられるね!」
「っ……つ、続いてればね」
「ツンデレだなぁ〜。てことで、もう喰っていい?」
「はぁっ!?」
俺、出会った日からめちゃくちゃ我慢したよ?
逆褒めて欲しいくらい。
「〜〜〜っ、好きにすれば!」
ツンっと言い張るけど、顔真っ赤。
「じゃあ遠慮なくいただきます!」
これから先も、絶対逃がさないよ。
永遠に……。
ーENDー