「ごめん…」
「いいよ…私が望んだことだし…」
腕の中に、擦り寄るようにして、今彼女がいる。
それだけで、胸がいっぱいになるほど、嬉しい。
ほんの、束の間の夢でもいい。
彼女が、この瞬間だけでも…俺のモノでいてくれるなら…。
「弥生子…あのさ…」
「…うん。分かってる……真宏とは、別れるよ。もう……未練なんか、ない」
そう告げた、彼女は小さく丸まって、俺の腕の中でまた新しい涙を流した。
「弥生子…」
「ごめん、悠太。身代わりにさせるようなことして……本当に、ごめん……」
「いいよ。気にすんなって。俺は嬉しかったから」
そうだ、嬉しかった。
こんな俺でも彼女の役に立てることが。
彼女が俺を頼ってくれたことが…。