「……っ」


突然の、彼女からのキスはとても冷たいものだった。


何が起こったのかと固まっていると、彼女は小さくけれども哀しそうに笑う。


「ごめん…」

「…、いや……」


あれこれと、どう慰めようかなんて、考えていたけれど、まさかこの展開になるとは思わず。


気付くと、俺は彼女の口唇を指でなぞって、キスを静かに返していた。


溢れる熱い涙。
まるで、瞳が壊れてしまったかのように、いくつも伝っていく、その涙を指で掬っては角度を変えて、何度もキスを交した。


ぎゅっと掴まれた、スウェットの腕の辺り。
震えてる心を溶かすように、その手を握ってキスを繰り返す。


どれくらいの間そうしていただろう。
彼女の全身から力が完全に抜けてしまうまで、俺は彼女の口唇を求め続けた。


タガが外れるとはこのことだろう。

一度触れてしまえば、留まることを知らないガキのようで…自分でも呆れるくらいに求めてしまっていた。


それでも、彼女が泣き止んでくれるなら、それでいいと…そう、思った。