ぴんぽん


5分後。

控えめなインターフォンの音がして、扉を開けると、真っ青な顔をした弥生子が立っていた。


また倒れられたら困ると、すぐに部屋の中に入れて、ソファーに促す。


「ありがと」

「どういたしまして」


用意しておいたコーヒーを素早く彼女に渡すと、少しホッとした声で彼女が応えてくれる。


「悠太はさ…」

「んー…?」

「好きな人、いるの?」

「……は?」


いきなりの話の流れに、十分間を取ってから…なんとも情けない声で返事を返した。


「いる?」

「いんや?今はいない。仕事で手一杯で、恋愛にうつつ抜かしてる場合じゃないんだな、これが」


苦笑いを無理やり作る。
そこそこの経験はあるけれど、心の真ん中にいるのはいつだって、彼女だけの俺は、本音を隠すようにして、そう言った。


「そっか…悠太、真面目だもんね」

「んー…?そうでもないけどな」


彼女の代わりにした女の子たちに、どれだけ心の中で謝ったことか…。


そんなことをブツブツと思っていると、不意をついて彼女が俺の方に近付く。